あなたは、こんな経験をしたことはありませんか?
- 大きないびきをかくと家族に指摘される
- 日中に突然眠気が襲ってくる
- 朝起きた時に頭痛や疲労感がある
これらの症状は、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome、通称SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に停止する病態を指します。睡眠時無呼吸症候群の患者数は近年増加傾向にあり、日本国内の未検査・未治療の患者は500万人(約20人に1人)と言われています。
この症状は、単なる睡眠の質の低下だけでなく、心血管疾患のリスク増加など、重大な健康問題を引き起こす可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると心臓病や脳卒中などのリスクを高めるため、早期発見・治療が重要です。
この睡眠時無呼吸症候群の原因は何なのでしょうか?この記事では、睡眠時無呼吸症候群の原因と症状を詳しく解説します。
この記事で分かること
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは何か?
- 睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因とは
- ストレスはどれくらい睡眠時無呼吸症候群に影響するか
- 睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴
- 日常的にできる睡眠時無呼吸症候群の予防法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義と自覚しづらい理由
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まるまたは浅くなるため、日中の眠気、疲労、集中力の低下につながる可能性があります。また、心臓病、脳卒中、死亡のリスクも増加します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。
10秒以上の無呼吸、または著しい低呼吸が1時間に5回以上発生すると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
しかし、睡眠時無呼吸症候群は自覚症状が乏しいという特徴もあります。なぜなら、眠っている本人は無意識の睡眠中に症状が現れるため、パートナーや家族から指摘されるまで気づかないケースが多いのです。
また、日中に眠気や疲労感を感じることが多くなる症状があっても、多くの人は睡眠不足やストレスなどが原因だと考え、睡眠時無呼吸症候群とは結びつきづらいです。
睡眠時無呼吸症候群の主な原因3つ
睡眠時無呼吸症候群には、主に2つのタイプがあります。
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
睡眠時無呼吸症候群の中では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が一般的で、睡眠中に喉の筋肉がリラックスし過ぎて気道が塞がれることで呼吸が停止します。これは、肥満、扁桃腺の肥大、顎の構造異常など、様々な要因によって引き起こされることがあります。
肥満により増えた首周りの脂肪が気道を塞ぐ
肥満は、最も一般的な閉塞性睡眠時無呼吸症候群を招く要因です。体重が増加すると、首周りの脂肪が増え、気道を圧迫しやすくなります。これにより、睡眠中に気道が塞がれやすくなり、無呼吸の発生につながります。
扁桃腺(へんとうせん)が肥大して気道を塞ぐ
扁桃は、喉の奥にある2つの小さな丸い組織で、主に感染症に対する免疫の一部です。しかし、扁桃が大きくなりすぎると、気道を塞ぎ、呼吸や睡眠に問題を引き起こすことがあります。
- 感染症
扁桃炎などの感染症は、扁桃が腫れて肥大する原因となります。
- アレルギー
アレルギー反応は、扁桃が腫れて炎症を起こす原因となることがあります。
- 遺伝
扁桃肥大は、家族内で発生することがあります。
特に子供は扁桃腺やアデノイド(※)の肥大は、気道を塞ぎやすくするため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の一因となります。これらの組織が肥大すると、特に睡眠中に気道が狭くなり、無呼吸を引き起こす可能性があります。
※アデノイドとは、鼻の奥にある「咽頭扁桃」と呼ばれるリンパ組織のことです。
顎の位置が下がり気道が圧迫される
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因の一つとして、下顎の位置異常が挙げられます。下顎が正常な位置よりも後方に位置している場合、気道が狭くなり、睡眠中に呼吸が止まってしまうことがあります。
例として、下顎が小さい、あごが後退している骨格の場合は、気道が狭くなりやすい傾向にあり、特に顎が極端に小さい人は閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなります。
下顎の位置異常が気道圧迫に与える影響
- 舌根沈下
下顎が後方に位置すると、舌根と呼ばれる舌の付け根部分が下がって気道を塞いでしまう可能性があります。睡眠中に筋肉がリラックスすると、舌根沈下が起こりやすくなります。
- 咽頭腔の狭小化
下顎が後方に位置すると、咽頭腔と呼ばれる喉の奥の空間が狭くなります。咽頭腔は、鼻から肺までの空気の通り道であり、狭くなると気道が圧迫されやすくなります。
ストレスが原因で睡眠時無呼吸症候群になる可能性はある?
ストレスが直接的に睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことはありませんが、ストレスが溜まっている状態は、暴飲暴食により肥満や睡眠不足を発生しやすくさせ、生活習慣の乱れから睡眠時無呼吸症候群になりやすい状態となります。
また、睡眠時無呼吸症候群を発症していると、日中の眠気や疲労感、頭痛、気分の落ち込みにより、ストレスが溜まりやすい状態となります。
このように、ストレスと睡眠時無呼吸症候群は互いに悪循環を生み出す関係性だと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群は、重要な睡眠障害であり、その危険性は軽視できません。具体的な症状としては上記に挙げた通りですが、放っておくと、睡眠中の無呼吸や低呼吸により脳内が酸素不足となり、体には過度なストレスがかかります。このストレスの影響で、糖尿病や脂質異常症の発症リスクが高まる可能性があります。また、高血圧のリスクも増加します。
引用:睡眠時無呼吸症候群とは | 大野城市のけいゆうメディカルクリニック
また、ストレスにより生活習慣が乱れてしまうケースは多く、生活習慣の乱れは睡眠時無呼吸症候群の発症に大きく関与します。
医療機関で行う睡眠時無呼吸症候群の診断と治療方法
睡眠時無呼吸症候群の診断は、通常、睡眠検査(ポリソムノグラフィー)によって行われます。この検査では、睡眠中の呼吸パターン、心拍数、酸素レベルなどが監視され、無呼吸の発生とその重症度が評価されます。
治療方法は、症状の重さや原因によって異なりますが、CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸器)療法が最も一般的です。
CPAPは睡眠中に一定の圧力で空気を気道に送り込むことで、気道が閉塞するのを防ぐ装置です。また、生活習慣の改善、口腔内装置の使用、場合によっては手術が必要な場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群の主な診断方法
医療機関を受診し、睡眠中の様子や症状などを医師へ伝えます。
自宅で簡易検査機器を用いて、睡眠中の呼吸状態を記録し、医師へ提出します。
簡易検査で異常が見つかった場合や、医師が必要と判断した際は、医療機関で一晩泊まり、睡眠中の脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸状態、血中の酸素飽和度などを記録します。最も精密な検査方法ですが、入院が必要となります。
PSG検査についての参考:終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)について | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
睡眠時無呼吸症候群の主な治療方法
診断の手法 | 具体的な方法 |
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CPAP療法 | 鼻に装着したマスクから一定の圧力を持つ空気を送り込み、気道を広げておく治療法です。 |
マウスピース治療 | 上顎と下顎を固定するマウスピースを装着することで、気道を広げておく治療法です。 |
外科手術 | 扁桃肥大や下顎の位置異常など、睡眠時無呼吸症候群の原因となる異常を手術で改善する方法です。 |
減量 | 肥満が睡眠時無呼吸症候群の原因となっている場合は、減量することで症状が改善することがあります。 |
生活習慣の改善 | 規則正しい睡眠習慣、適度な運動、禁煙などの生活習慣改善も効果があります。 |
睡眠時無呼吸症候群の予防としては、健康的な体重の維持、定期的な運動、喫煙の中止、適度なアルコール摂取などが挙げられます。
また、睡眠の質を高めるために、一定の睡眠スケジュールを守り、寝室環境を改善することも重要です。
1日でも早く睡眠時無呼吸症候群の対策を!
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。肥満、扁桃腺の肥大、顎の構造異常など、様々な原因が考えられますが、早期発見と適切な治療によって、症状の改善が期待できます。
いびき自体は一般的な現象ですが、大きないびきやいびきのパターンに変化がある場合は、睡眠時無呼吸症候群のサインである可能性があります。特に、いびきの間に呼吸が止まるような症状が見られる場合は、専門医に相談することをお勧めします。
もしもいびきが気になる場合は、専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。あなたの睡眠の質を守り、健康的な生活を送るために、今すぐ行動を起こしましょう。
当記事の参考文献
・睡眠時無呼吸症候群 – 独立行政法人国立病院機構 近畿中央呼吸器センター
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)について|新宿睡眠・呼吸器内科クリニック|いびき、CPAPのことなら
・睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS) |一般社団法人日本呼吸器学会